どうもどうも、
みなさん、保険証って病院以外で使いますか?
レンタルソフト店の会員になるとき、クレジットカードを申し込むとき、金融機関で口座を開設するとき。
結構いろいろな場面で「証明書」として使われるますよね。
その保険証(正式名称は健康保険被保険者証)ですが、
運転免許証と比べて信用度が低いということは、なんとなく実感としてあると思います。
運転免許証やパスポートであれば、それ1枚で足りるところを、保険証の場合はもう一つなんらかの証明書を用意しなくてはいけないことが多いからです。
これは一体なぜなのでしょうか。⊂(´A`)⊃
そんなの簡単、写真が付いていないからに決まってんじゃん!!
と、たいていの方は思うでしょう。
そしてそれは間違ってはいません。
ただ果たしてそれだけの理由なのでしょうか?
ここでは保険証の信用性について、深く掘り下げていきたいと思います。
保険証の情報はどこから来るのか?
運転免許証を発行するのは都道府県の公安委員会でありますが、手続きの際には住民票を持参する必要があります。
住民票の情報をもとに発行されるわけでありますから、まるっきりこの世に存在しない架空の人物のものが発行されることは、
住民票を偽造しない限りありえないことになります。
(なりすましは可能かもしれませんけど)
婚姻などで氏名が変更となる際も住民票が必要となります。
これが「写真付き」である以外にも信用度が高いゆえんなのであります。
パスポートも同様に、作成の際には戸籍抄本が必要です。
では保険証はどうでしょうか。
まず一口に保険証といっても、大きく分けて2種類あります。
会社員やその扶養家族が持っている「健康保険被保険者証」と
自営業者等が持っている「国民健康保険被保険者証」です。
後者の国民健康保険については、住所地がある自治体が運営し、保険証を発行するので、「情報」の信用度は高いと言えます。
住民票がない人物のものは発行できません。
問題は前者の健康保険です。
会社員やその扶養家族が所有する「健康保険被保険者証」を発行するのは、全国健康保険協会もしくは各健康保険組合です。
入社した時、扶養家族が出来た時、職場の総務担当者は、これらに届出を行い、保険証を発行してもらいます。
しかし、その届出の際に実は本人確認できる書類の添付は求められないのであります。\(´A`)/
家族を扶養に入れる場合は、収入が少ないことを証明する書類等(自治体が発行する非課税証明書など)を求められる場合がありますが、
全てにおいて求められるわけではありません。
少なくとも入社した本人については、よっぽど不審な点がない限り届出書に記載された通りの内容で保険証を発行するのです。
それでいいのか!?と思ってしまいますが、建前としては本人である確認は「当然職場が入社の時に行っている」として、
健康保険組合としてはわざわざ行ってはいないのであります。
大きな組織であれば、そういった確認は当たり前のように行っていることと思いますが、例えば10人くらいの小さな会社だったりすると、きっちりとした確認は行っていないところもあるでしょう。
2007年の英国人女性殺人・死体遺棄事件の犯人である市橋達也も偽名を使い建設現場などで働いていました。
偽名で入社し、その名前で健康保険証が発行されてしまう可能性はゼロではないのです。。
※少し横道にそれますが、雇用保険(いわゆる失業保険)の加入についても似たようなもので、手続きを行うハローワークでは本人確認は行われません。
実際に失業給付をもらう際には免許証などの証明書であったり、本人名義の銀行口座が必要だったりしますが、単に入社と退職の手続きだけでは全く確認が入らないのです。
ハローワークのデータになければ、新規の番号が振られるだけ。住民票のデータとも連動していません。
配偶者が仕事を辞めたという理由で健康保険の扶養に入れようとすると、ハローワークが発行する「離職票」の提出を求められるケースもありますが、
これも厳密にいえば絶対に架空人物でないとは言えません。
ただ、勤務先の健康保険が、全国健康保険協会である場合。多少は状況が異なってきます。
全国健康保険協会は昔でいう社会保険事務所です。
かつて社会保険事務所では健康保険と厚生年金を一体的に取り扱っていました。
社会保険庁が解体され、社会保険事務所は年金部門の日本年金機構と健康保険部門の全国健康保険協会に分かれたわけなのですが、
入社・退社の際の手続きは健康保険についても日本年金機構で行われています。
厚生年金の手続きと一体で行うため、基礎年金番号も一緒に届け出なくてはならないのです。
何が言いたいかというと、基礎年金番号が存在しない人間の健康保険証は原則的には発行できないということです。
基礎年金番号がないというのは、20歳未満であるか、もしくは来日したての外国人など特殊なケースに限られ、そういった場合はもちろん発行してもらえます。
以上を踏まえると、全国健康保険協会発行の保険証は、健康保険組合発行の保険証よりは信用度は高いと言えます⊂(^-^)b
また、すっかり忘れていましたが、公務員や私立学校の教職員などが所有する「共済組合員証」(簡単に言えば公務員の保険証である)は、
国民健康保険の保険証と同程度に信用できるといえます。なぜなら公務員は入職の際に戸籍謄本の確認などをされるからです。
(私立学校の教職員については知りません。すいません・・。)
健康保険証は、運転免許証やパスポートと比べて、架空人物である可能性が高いのであります。
オウム真理教事件の実行犯の一人、「走る爆弾娘」の異名を持つ菊地直子元信者が2012年6月、17年間の逃亡生活に終止符を打ち、逮捕されました。
(高裁で驚きの無罪判決、そして2017年12月、最高裁で無罪が確定しました。)
菊地元信者は逃亡生活の中で、偽名で介護事業者などで働き、健康保険証を使用して通院していたことが明らかになっています。
これ、保険証を「偽造」していたと考えている人がいますが、そうとは限らないのです。
証明書として使用していただけならともかく、架空人物の偽造保険証で通院すると、
その場は3割負担でしのげても、病院はその後に支払基金を通じて残りの7割を健康保険組合等に請求しますので偽造がばれます。
では実在の人物のものを偽造すれば?これも通院歴を記した通知が健保組合等から送られてくる場合があるのでばれる可能性があるのです。
通院が目的であるならば、「偽造」は有効ではないと言えます。
ではどうやって手に入れたのでしょうか?
予想するに介護事業者は小規模ではないのかと。ともすれば偽名で働いて、健康保険の届出もしてもらって、いとも簡単に手に入れたのでは?との推測をしてみます。
ただ、「小さな会社」ということは全国健康保険協会の可能性が高いです。
とすると、基礎年金番号を記入して、厚生年金と一体で加入しなければならないわけで、偽名ではかなり難しい。
健康保険組合であれば、年金については適当にごまかし続けることも小さな会社であれば可能かもしれませんけどね。
当時のニュース記事などをインターネットで探してみても、なかなか詳しくは出てきません。
しかし、どうも同居していた男の知人の保険証を借りて使用しただけのようです。
実在の人物になりすまして、住民票の写しは取得していたようですが、それで銀行口座は作れても、保険証を発行してもらうことは出来なかったのかもしれません。
明らかな虚偽の届出という犯罪行為の話を例に挙げてしまいましたが、単に職場の担当者や本人の記入ミスなどでもそのまま発行されてしまいます。
生年月日や漢字が違う状態の保険証をもらったことがある方も、少なからずいるのではないでしょうか。
すぐに担当者へ連絡して発行しなおしてもらうのが普通でありますが、
それをそのまま金融機関へ持っていけば簡単に架空口座の出来上がりです。⊂(´A`)⊃
絶対にやってはいけないけれども。
銀行口座まで作れてしまう保険証ですが、案外ファジーな存在なのです・・・。
マイナンバー制度が導入された現在でも状況は変わらないのでしょうか。
健康保険組合については、H29年1月から届出の際にマイナンバーの記載が義務付けられています。
とはいえ、健康保険組合が保険証発行の際に逐一マイナンバーを入手して、
届出書に記載された情報に間違いがないかどうかを確認しているのでしょうか。
結論からいうと、多くの健康保険組合ではそんなことはしていません。
取り急ぎ保険証をすぐに発行して、事後的に企業からマイナンバーを届け出てもらっているのです。
マイナンバーは世間が思っているように、役人が12桁の番号をポンと打ち込めば個人情報がズラッと出てくるというものではないのです。⊂(´A`)⊃
例えば扶養の認定をするために収入を確認したい時、税務署から所得の情報をもらうためのキーになるだけなのです。
どこまでマイナンバーを利用した確認を行うかは各健康保険組合のスタンスによりますが、
少なくとも一時的にはこの世に存在しない人間の保険証が発行されてしまう可能性があるということですね。。
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