その1では高額療養費についての比較でした。
高額療養費と並んで大きく差がつく「付加給付」が傷病手当金です。
傷病手当金とは、仕事や通勤以外の原因による病気やケガによって、仕事を休まなくてはいけなくなった場合に、その4日目から支給されます。
(余談ですが、業務が原因の場合は労災保険から休業補償給付、通勤が原因の場合は同じく休業給付というものが支給されます。
業務中のケガなどについて、労働者が恣意的に健康保険を選ぶということは出来ず、疑わしい場合は健保組合などから状況の確認が入る事もあります。
ただし、腰痛や精神疾患などは、業務が原因と認められるには高いハードルがあり、たいていは健康保険から給付が行われこととなります。)
金額は標準報酬月額の3分の2、約66.7%です。(また出た!標準報酬月額!まあ「その1」の高額療養費と同様に考えてください。)
もちろんこれは、有給休暇を使ったり、会社の制度として一定期間は給料があったりという場合には支給されません。
細かく言えば、給料が一部、例えば半分支給されている場合は、「標準報酬月額の3分の2」との差額が健康保険から支給されることとなります。
そして支給される期間は、一つの傷病につき最大「1年6ヵ月」です。
一時的に復帰して支給がされなかった期間があったとしても、延長はされません。
「支給を始めた日」から起算して1年6ヵ月なのです。
長々と書いたが、これが「最低基準」です。
つまり法定給付の内容です。
その1でも書きましたが、全国健康保険協会はこの基準で給付を行うのです。
では大企業の健保組合はどんな具合なのでしょうか?
まずトヨタ自動車健康保険組合を見てみましょう!⊂(^-^)b
金額については約13%上乗せして、80%
期間については3年間(2年6ヵ月までは80%、それ以降3年までは40%)
以上となっている。
ついでにソニー健康保険組合も見てみると、3年間ずっと85%です。
高額療養費と同様に、一生この制度のお世話にならない人も当然たくさんいるとはいえ、随分と差があるものです。
大企業であるならば、多くは休職制度が整っており、最初の数ヵ月は給料が満額出るなんて会社も少なくはありません。
(在職年数に応じて、1年以上給料満額なんて企業すらありますな・・)
その上で、給料が満額出なくなったり、ゼロになったりした後でも、手厚い傷病手当金が支給されるのであります。\(´A`)/
高額療養費と傷病手当金の2つの「付加給付」に注目してきました。
健康保険の「給付」はこれ以外にもあり、それぞれ健保組合独自の「付加給付」が存在します。
しかし、健保組合によって違うのは「給付」だけではありません。
保険料率、すなわち毎月給与から天引きされている保険料も違うのです!!
健康保険法160条では、全国健康保険協会も各健康保険組合も、1000分の30~1000分の120(3%から12%)までの間で保険料率を定められるとしています。
随分と開きがあるものですねw
では全国健康保険協会の保険料率を見てみましょうか!
実は全国健康保険協会には都道府県ごとに支部があり、それぞれ保険料率が異なっています。
平成29年度は平均して約10%となっています。
そして多くの健康保険組合はこの水準を下回っているのです。
( まあそうでないと健康保険組合の存在意義が問われてしまうのですが)
大企業の健保だと、7~8%くらいです。
平成27年度からは、後期高齢者医療制度への「支援金」の算出方法が変わり、高額所得者が多い健保組合の負担が大きくなりました。
それにより、保険料率を上げる健保組合もあったのですが、それでもこの水準なのであります。\(´A`)/
これはどの程度の違いなのか。保険料を算出してみましょう。
給与から天引きされる保険料は、標準報酬月額×保険料率×1/2で計算されます。
1/2を掛けるのは、保険料の負担は労使折半だからです。半分は会社が支払います。
「標準報酬月額」の決定方法は健康保険法で定められており、各健康保険組合によって変わるということはありません。
臨時賞与などの扱いで多少解釈が異なることはあるけれども、大原則は一緒なのです。
つまり差が出る要因は保険料率だけです。⊂(^-^)b
大企業Aの健保組合の料率を8%、全国健康保険協会の料率を10%として当てはめてみましょう。
・標準報酬月額20万円の場合
A健保組合:200,000円×8%×1/2=8,000円
全国健康保険協会:200,000円×10%×1/2=10,000円
月々2,000円、年間にして24,000円違ってきます。
更に保険料は月給だけでなく、賞与にもかかります。
賞与にかかる保険料は、1000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に保険料率を掛けて算出します。
賞与が夏冬の2回。それぞれ30万円だとすると。
A健保組合:300,000円×8%×1/2×2=24,000円
全国健康保険協会:300,000円×10%×1/2×2=30,000円
6,000円の違い。
月給と賞与、合わせて年間3万円違ってきます。
年収300万円の新入社員を想定してみたわけですが、当然給与が高いベテラン社員であれば、なおさら差がつくことになります。
40年サラリーマン生活を続けるとすれば、相当な金額となります。なにせずっと年収300万円で計算しても40年で120万円です。
双方が同じ程度で順調に収入を上げていったとしたら、200万円以上の差がつくかもしれません。\(´A`)/
なんとぅー\(´A`)/
このように同じくらいの給与であっても、入っている健康保険組合によっては、重病を患った時の負担や天引きされる保険料で大きく差がついていることがあります。
ここでは詳しく触れませんでしたが、自身や扶養家族が出産した際に給付される「出産一時金」であったり、
同じく死亡した際に給付される「埋葬料(費)」などにも、法律で定められた基準を上回る「付加給付」が存在するのであります。\(´A`)/
さらには定期的に置き薬がもらえたり、利用できる保養所が充実している健保組合もある!
また、大企業などの健保組合について、恵まれている面ばかりを伝えてきましたが、その分家族の扶養の認定については厳しい場合もあるので注意が必要です。
これは扶養家族からは保険料を取らないのに、通院などの際に「給付」が発生するからです。
(健保の職員はそんなことハッキリとは言わないでしょうが)
とはいえ、真っ当な扶養の申請ならば、必要書類さえ整えれば認定してもらえます。
必要書類の多い少ないや、申請が遅れた際にどの時点から認定するかという程度の違いです。
総括すると「健康保険組合」という存在は、待遇の良し悪しを判断する立派な「福利厚生」と言えるのではないでしょうか。
就職・転職活動の際に健康保険組合はどこか?と考える人はレアかもしれません。
またどこの組合なのか予測もつきにくいこともあるでしょう。
(トヨタの関連会社だ、といってもトヨタ関連の健保組合は複数あるようです。)
ただ、もしハッキリとわかるのであれば、同じような給料と業務内容の会社で迷ったときに決断を後押ししてくれるかもしれません。⊂(^-^)b
うん、まあこの事実を知って、
「同じ程度の給料だと思っていた友人が、実はこんなに優遇されていた!!クソが!!」
などと嫉妬の炎をたぎらせる人の方が多いかもしれませんけどね。
(^-^)
(イメージ画像:千葉県御宿町)
この記事へのコメントはありません。