世相

バンドのファンは今も昔も両方好きでなくてはならないのか

30代になってから、めっきり音楽の新規開拓をしなくなりました。
元々は邦ロックとカテゴライズされるジャンルが好きで、今も好きなんですけれども。
理由はまあ、仕事にかける時間が多くなったことや、感受性の低下により音楽に救ってもらうということが皆無となったからとか色々あります。
それでも、元々好きなバンドの情報であればある程度はチェックし、新しい曲が出ればチェックしたりライブに行ったりすることも、まだまだ少なからずある状態です。
しかし、その好きなバンドの中でも、方向性・音楽性がガラリと変わり、昔の曲は好きだけれど最新の曲は興味がなくなった・・というバンドも存在します。
おそらく多くの邦ロックファンが抱える現象だと思いますが、この現象について「今も昔も両方好き」というファンからのマウンティングが来た経験のある人も多いのではないでしょうか。
今回はこの、「昔の〇〇(バンド名)が好き」という方々が受けるマウンティング被害について考察したいと思います。

「今も昔も両方好き」というファンからのマウンティング

私は10代後半から20代全般にかけて、THE BACK HORN とういバンドが好きでした。このバンドとの出会いや私自身が受けた影響などは、別の記事に書いております。

大幅にざっくりいうと、このバンドの初期から中期にかけては、人間の負の感情を深く抉るような、退廃的な歌詞とメロディーが特徴でした。
万人受けするものではありませんが、最大公約数的でポップな曲を作る方々に魅力を感じない層にとっては、中毒性のあるバンドといえました。
だからこそ好きだったのでありますが、2010年代に突入したあたりからは、明るく前向きな・・というよりかはごく一般的な、他のバンドと差別化が難しいような曲を出していくことになります。
完全に私個人の感想なので異論は多数あるでしょうが(特にごく最近のTHE BACK HORNが好きな方には)、とにかく今と昔では「歌詞とメロディーの特性が違う」ことは確かなはずです。
というわけで私は現在、THE BACK HORN の昔の曲を聴くことはあっても、新しい曲をチェックしたりすることは全く行っていません。
このようなことはよくあることでしょう。
しかし、冒頭でも触れましたが、なぜか「今も昔も両方好き」というファンからのマウンティングがあります。

このマウンティングには以下、3つくらいのパターンに分けられるかな、と思います。

1.新しい〇〇(バンド名)を受け入れられないなんて・・度量が狭いんだな

バンドが変わりゆくことを受け入れられない、「昔の〇〇(バンド名)が好き」という人を度量の狭い人とレッテル貼りをするケースです。
しかし、これは私は単なる好みの問題と思います。新旧で違うことが明らかなのですから、新旧両方好きな人もいれば、旧しか好きになれないなあ・・という人も当然いるはず。
むしろ、「昔の〇〇(バンド名)が好き」という人にマウントを取ること自体度量が・・と思うのですがどうでしょうか。

2.私はメンバーと一緒に成長してる・・あなたはまだ子供なのね

バンドの音楽性が変わったことを単なる変化ではなく、「成長」「大人になった」と捉え、受け入れられる自分は「大人」であり、受け入れられない(この表現もどうかと思いますが)人は「子供」もしくは「老害」とレッテル貼りをすることでマウントを取るケースです。
音楽性の変化を「成長」と表現することは、音楽メディアの評論等ではよくあることのように思えますが、本気で「人としての成長」と捉えることは無理があるのではと感じます。
もちろん楽曲作りという意味では「成長」することは当然あるでしょう。
曲作りに慣れてきて、過去と違うものを作るようになるというのは自然なことでしょうし、粗削りな部分が洗練されていくということはあるんじゃないかなと、素人感覚ですが思います。
しかし洗練されたものが皆好きかといえばそうではありません。B級グルメが人気になるように、人の好みは千差万別でありますので、粗削りな昔の方が好きだな、という人も当然います。
なぜそれが、「子供」「成長できていない」など、未成熟であるかのようにマウンティングされなくてはいけないのかと理解に苦しむのであります。

※ただし、「昔の方が好き」にとどまらず、「変わったことが悲しい」「今の曲はつまらん」などと、現在を否定するような人は「老害」と揶揄されても仕方ないでしょう・・

3.音だけでなく、メンバーの心境変化などにまで思いを巡らせることができるのが真のファンだ!・・あなたは薄っぺらいファンですね

音楽を含めた芸術作品全般はその奥に潜む思想や心境を読み取ることが必要なのであって、単純に音だけを聞いて判断する人間は「薄っぺらい」ファンであるとのマウンティングパターンです。
初期の頃との比較やメンバーの心境変化を加味してたうえで、現在の楽曲を聴けば良さがわかるのだという主張です。

これはもう何というか、音楽とバンドを神格化しすぎているというか、「そこまで考えないと音楽の話をしちゃいけないんですか」という感じですね。
いや、もちろんそのような楽しみ方をするのは自由です。そして、当然ながら「現在の楽曲を単発で聴いて好き嫌いを判断する」というのも自由なのであります。
なぜ楽しみ方を強制され、挙句の果てに薄っぺらい人間であるかのようにマウンティングされなくてはいけないのかと理解に苦しむのであります。

その他、「変わっていないどころか一貫している」という主張をする人、どんなバンドでも少なからず存在すると思いますが、それはもはや哲学的な観点となりますので、「まあそういう見方もあるでしょうね」としか言えないかなあと・・
まあこの手の主張をする人は、マウンティングではなく単なる意見として主張される方が多いので、その点特に違和感を覚えることはありません。

単なる好き嫌いの問題にもマウンティングしたい人たち

好き嫌い、好みの問題に正解も上下関係もありません。収入などの上下がハッキリと分かるものですら、マウンティングはみっともなくて不快なものです。
上下がないものでマウントを取られるのは、不快な場合もありますし、今回の問題のように強烈な違和感を覚えることも多いです。
しかしながら、日常的にマウンティングしたがる人達は確実に、しかも結構な割合で存在します。

なぜそんなにもマウンティングしたいのか?とも思いますが、「ああ、そういう人なのね」と深く考えずにスルーするのが一番なのかなあと思います。

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